掲載紙:スポーツニッポン
日付または号数:1986年1月12日
主題:涙の花嫁
副題:アグネス感激の香港挙式・披露宴
本文:  元マネジャーの金子力さん(30)と5年越しの恋を実らせた人気歌手のアグネス・チャン(30)=本名・陳美齢さん=が11日、香港島のセントジョーンズ大聖堂で結婚式をあげた。神父の前で宣誓し、新郎のキスを受けたアグネスは感激の涙を流した後、白い歯を見せ、大きくほほえんだ。式の後、新郎・新婦は白いロールスロイスに乗ってリージェントホテルに入り盛大な披露宴。なお、日本と地元のテレビ局スタッフら約100人が詰めかけたが、取材合戦が加熱して、もみ合う一幕もあった。(本社←→国際電話)
 午前11時45分(日本時間午後零時45分)から大聖堂で始まった式は、双方の家族、親族、友人のほか、ファン約500人が詰めかけた。賛美歌が流れる中、カナダから駆けつけた長兄のポール・チャンさんが、8年前に他界した父親の”代理”で、純白のウェディングドレスのアグネスをエスコートしてバージンロードを入ってくると、感激でアグネスのホオに早くも涙がつたわった。
 ジョーンズ・ワン神父が英語で「金子さんとの結婚を望みますか」と尋ねると、アグネスは「イエス」とはっきり答え、二人で「一生愛し合います」と宣誓。長身の金子さんが体を折るようにしてアグネスの右ホオに軽くキスすると、花嫁の実感がこみあげたのか、アグネスは初めて白い歯を見せた。そして、続く賛美歌「ハレルヤ」では、自ら口ずさみながらここでも涙。
 約40分の式を終えて、教会の玄関に二人が現れるとファン500人が教会の周囲を取り囲み、一斉に歓声を上げた。「子供は何人?」の質問に、アグネスは「男の子2人と女の子1人が欲しい。出来たら男、女、男の順で・・・」とほほえんだ。
 アグネスの親族は中国の北京から5人、シンガポールから弟が駆けつけるなど、世界中にちらばる”地球家族”。その一員になった金子さんは「ボクは世界一幸せな男。中国語を勉強し、アグネスのママたちとコミュニケーションを図りたい」と語った。
 また、一時は日本人との国際結婚に当惑を隠さなかったアグネスの母親・陳彭端淑(ツェン・バン・ドンソ)さん(58)も「カネコはいい人です。新しい時代の日本人だと思います。二人でいい家庭を作ってほしい」と日中カップルを祝福した。
 なお、金子夫妻はきょう12日のアグネス家主催のパーティーを終えてあす13日に帰国の予定。15日には帝国ホテルで2億円の振りそでを着るなど豪華な披露宴を行い、下旬にハワイへハネムーンに出かける。

警官も出た日中取材合戦/披露宴で えっ?麻雀大会
○・・・地元の取材陣約60人、日本側は約40人と計100人が取材フィーバー。「地元スターの里帰り挙式」にわく地元側と、日本側の取材合戦は、エスカレートが高じて数十人が祭壇に上がったり、神聖な教会の中を走り回るなど大加熱。列席した欧米人が顔をしかめる光景や、ついには双方が場所の取り合いをめぐってつかみ合い寸前のケンカ騒ぎまで起き「クレージーで商業主義的な結婚式取材」と批判する米国人記者もいた。
 このため、新郎・新婦が式を終えて教会前でインタビュー、写真撮影に応じる時も、数十人の警官が輪を作って二人をガードする一幕も。
○・・・式に続いての披露宴は午後4時から九龍半島側の一流ホテルのリージェントで約600人が参加して盛大に行われた。ゲストの中には、対談で親しくなった安倍外相(現在訪米中)の代わりに外相の二男で、秘書の晋三さんや渡辺プロの渡辺晋社長夫妻らの姿も見られた。
 縁起物の姉妹が飛び出した披露宴は、ケーキカットの直後、親類が麻雀を始めるなと、いかにもなごやかな香港ムード。アグネスも中国伝統の赤い花嫁姿に続いて振りそで姿で登場。合計4回もお色直しをし、宴は延々深夜近くまで盛大に行われた。