掲載紙:サンケイスポーツ
日付または号数:1985年9月5日
主題:母の許しあるまで 40歳になっても待つワ
副題:アグネス女ごころ語る
本文:  元渡辺プロダクション社員で担当マネジャーたった金子力(つとむ)さん(31)との愛が発覚した人気タレント、アグネス・チャン(30)=本名・陳美齢(ツェン・メイリン)が四日午後、東京・麻布台のレコーディングスタジオで記者会見し、金子さんと結婚を前提に付き合っていると語った。国による結婚観の違いから、現在はアグネスの母親、陳彭端淑(ツェン・バン・ドン・ソ)さんからの返事待ちだが、アグネスは強く、「結婚はあせってないし、反対されても40歳まで待てばOKしてくれるヨ」と、にこやかに話した。
 結婚相手をこの人と決め、家族に了解をとってから親密な付き合いをする、という中国的なモラルを大切にするアグネスなので、この日の会見は”結婚前提の交際会見”。グレーと白のストライプのロングジャケットを着て笑顔で現れた。
 アグネスに結婚話が持ち上がったのはことし2月。NHK特集「帰ってきたツバメ~アグネス・チャンのルーツ」(6月放送)のロケで、母親の陳彭端淑さんの故郷、中国・貴州へ出かけたときだという。
 金子さんは57年からアグネスのマネジャーとなったが、それまでは仕事の話ばかりでプライベートな付き合いはなかった。が、この3週間の貴州ロケの時に、金子さんが「付き合いましょう」とアグネスに言った。アグネスは「自分は本気じゃないと付き合わない人間。金子さんもそれを知ってるからプロポーズだと思った。その時は迷ったけど、金子さんとは生き方が一緒だから」と愛をあたためてきた。
 8月末に金子さんは両親と共に香港にいるアグネスの母親を訪ね、正式に結婚を申し込んだ。国際結婚となる上、日本との結婚観の違いやアグネスの父が8年前に他界していることなどから、アグネスは「今、家族会議をしているところ。10月に香港に戻る時は返事もわかると思う」と。さらに「中国人との結婚を望んでいたお母さんの複雑な気持ちもわかるから、お母さんのペースに合わせます。結婚はあせっていません。国籍に関係なく皆仲よくしようということを自分自身で経験してみたい」と多少問題のある結婚話だが、大らかに構えて嬉しそうなアグネス。
 「結婚式は香港で挙げたい。日取りとかは、ずっと家で頼んでいる占い師にみてもらう」と式は中国式になりそう。「もし反対されてもきっと40歳まで待てばOKしてくれるヨ」とも話していた。
 金子さんは昭和29年、横浜生まれ。早稲田大学卒業後、52年に渡辺プロに入社し、宣伝部に4年在籍。その後マネジャーとなり3年前からアグネスを担当していたが、ことし7月末で同社を退社し、現在は「マジメなサラリーマンになる」(アグネス)準備中。離婚歴あり。

 [アグネスに聞く]
――中国人との結婚を望んでいたお母さんを、なんて説得したの?
 「日本に住んでも飛行機いっぱいあるから平気だよと言ったら、ちょうど事故があったときなので、飛行機は危ないって(笑い)。でも金子さんの人柄をわかってくれると思う」
――金子さんのどこに魅かれたの?
 「会社の中で一番いい人(テレ笑い)。私のマネジャーになった時、自分の信じることをやろうと言ってくれました。いつまでも清純じゃいけないから変身しろなんて言わないで、私の生き方に賛成してくれた」
――以前は日本人の男性はいばっているから嫌いだと言っていたけど
 「彼はいばってないです(笑い)」
――結婚してうまくやっていける?
 「とてもやさしいお母さんと、いいお父さんだから大丈夫」
――タレントとマネジャーの結婚は、芸能界ではタブーだけど・・・
 「そんなこと全然知らないヨ。なんでオフィスラブがよくないんだろうね(笑い)」
――金子さんの離婚歴は?
 「気にならない。彼は”生まれかわった”と言っていた」